1 :チリ人φ ★ 2014/03/07(金) 02:49:41.16 ID:???
発表当初は大きく報道されながら、論文上の様々な問題点や相次ぐ追試失敗により、存在自体に疑惑が持たれていたSTAP細胞。その疑惑を払拭する為、理研が5日に公開した「実験手技解説」の記述に関して、慶應大の吉村教授(免疫制御)がホームページ上で新たな問題点を提起した。
開示された文章に「STAP幹細胞にはTCR再構成のあとはない」と記されていたのを根拠に、論文要旨にある「酸刺激によって体細胞が多能性を持つように誘導した」とする説明に疑問を呈し、酸処理によって元からある多能性細胞を選び出しただけの可能性が否定出来ないことを指摘している。
TCRとは、免疫を司る細胞の一つ「T細胞」が細胞膜表面に出している受容体のこと。T細胞はこの受容体を通して病原体の一部を「抗原」として認識することで活性化し、増殖して体の防御反応の亢進に関与する。
多種多様な病原体に対応するため、T細胞は受容体に関する自らの遺伝子を組み換えていることが知られており、この現象が「TCR再構成」と呼ばれている。余談だが、同じく免疫を司る「B細胞」でも、多種多様な病原体に対応するために遺伝子組み換えが起きており、そのメカニズムを解明してノーベル賞を獲得したのが利根川進博士である。
もし、STAP論文が主張するように、酸刺激によって分化済みの細胞(体の各組織の細胞)が多能性を獲得したのであれば、T細胞由来のSTAP幹細胞には、T細胞時代の痕跡、すなわちTCR再構成によって再構成された遺伝子配列が存在するはずである。しかしながら、理研から新たに開示された文章では、「8個のクローン中、TCR再構成の痕跡が認められたのは0個」と記されていた。すなわち、後出しの文章で、分化済みの細胞からSTAP細胞を作成したとする根拠が成り立っていないことを認めた形と言える。
分化済みの体細胞に何らかの手段で多能性を獲得させることの利点は、iPS細胞研究の発展が示す通り。
患者自身の体細胞から多能性幹細胞という段階を経て各臓器の成熟細胞に分化させ、拒絶反応のない人工組織や臓器の作成、あるいは難治性の疾患の病態機序解明に利用出来ることが見込まれるのである。
だが、iPS細胞は体細胞に特定の遺伝子を導入して作成されるため、癌化の可能性を完全には否定出来ない。
遺伝子を導入することなく体細胞に多能性を獲得させられるというSTAP細胞は、iPS細胞の欠点を克服出来る可能性が期待されたからこそ、STAP論文発表は大騒ぎとなった。だが、生まれてすぐの期間にのみ存在する多能性細胞がSTAP細胞の正体だったならば、それ自体は一つの発見だが、iPS細胞に取って代わる可能性は低くなってしまう。
吉村教授が引用したブログによると、増殖能を持ち医療応用可能なSTAP幹細胞だけでなく、元となるSTAP細胞のDNA配列情報にもTCR再構成の痕跡がないとのことで、教授は、もし事実ならと前置きした上で、論文の図と明らかに矛盾すること、多能性誘導説がますます弱くなることにも言及している。
STAP細胞への相次ぐ疑惑も、実験手技解説が公開され、小保方博士自身の追試成功によって一段落するかに見えたが、まだ続きそうな気配である。
(文責:チリ人φ★)
元ネタのブログ
http://new.immunoreg.jp/modules/pico_boyaki/index.php?content_id=348
理研の実験手技解説
http://www.cdb.riken.jp/jp/04_news/articles/pdf/14/protocol_exchange_v1.pdf
体細胞の分化状態の記憶を消去し初期化する原理を発見 | 60秒でわかるプレスリリース | 理化学研究所
http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140130_1/digest/
体細胞の分化状態の記憶を消去し初期化する原理を発見 | 理化学研究所
http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140130_1/
MUSE細胞(成人ヒトの間葉系組織から発見された多能性幹細胞)
http://www.stemcells.med.tohoku.ac.jp/outline/
記者注:TCR再構成の説明を大幅に簡略化したので、詳しくはこちらをどうぞ
T細胞の分化と機能
http://www.genome.tokushima-u.ac.jp/dei/tcellreview.html
STAP幹細胞は酸刺激で多能性を獲得した細胞ではない?理研が公開した実験手技解説が要旨と矛盾?慶應大教授が新たな問題点指摘の続きを読む
発表当初は大きく報道されながら、論文上の様々な問題点や相次ぐ追試失敗により、存在自体に疑惑が持たれていたSTAP細胞。その疑惑を払拭する為、理研が5日に公開した「実験手技解説」の記述に関して、慶應大の吉村教授(免疫制御)がホームページ上で新たな問題点を提起した。
開示された文章に「STAP幹細胞にはTCR再構成のあとはない」と記されていたのを根拠に、論文要旨にある「酸刺激によって体細胞が多能性を持つように誘導した」とする説明に疑問を呈し、酸処理によって元からある多能性細胞を選び出しただけの可能性が否定出来ないことを指摘している。
TCRとは、免疫を司る細胞の一つ「T細胞」が細胞膜表面に出している受容体のこと。T細胞はこの受容体を通して病原体の一部を「抗原」として認識することで活性化し、増殖して体の防御反応の亢進に関与する。
多種多様な病原体に対応するため、T細胞は受容体に関する自らの遺伝子を組み換えていることが知られており、この現象が「TCR再構成」と呼ばれている。余談だが、同じく免疫を司る「B細胞」でも、多種多様な病原体に対応するために遺伝子組み換えが起きており、そのメカニズムを解明してノーベル賞を獲得したのが利根川進博士である。
もし、STAP論文が主張するように、酸刺激によって分化済みの細胞(体の各組織の細胞)が多能性を獲得したのであれば、T細胞由来のSTAP幹細胞には、T細胞時代の痕跡、すなわちTCR再構成によって再構成された遺伝子配列が存在するはずである。しかしながら、理研から新たに開示された文章では、「8個のクローン中、TCR再構成の痕跡が認められたのは0個」と記されていた。すなわち、後出しの文章で、分化済みの細胞からSTAP細胞を作成したとする根拠が成り立っていないことを認めた形と言える。
分化済みの体細胞に何らかの手段で多能性を獲得させることの利点は、iPS細胞研究の発展が示す通り。
患者自身の体細胞から多能性幹細胞という段階を経て各臓器の成熟細胞に分化させ、拒絶反応のない人工組織や臓器の作成、あるいは難治性の疾患の病態機序解明に利用出来ることが見込まれるのである。
だが、iPS細胞は体細胞に特定の遺伝子を導入して作成されるため、癌化の可能性を完全には否定出来ない。
遺伝子を導入することなく体細胞に多能性を獲得させられるというSTAP細胞は、iPS細胞の欠点を克服出来る可能性が期待されたからこそ、STAP論文発表は大騒ぎとなった。だが、生まれてすぐの期間にのみ存在する多能性細胞がSTAP細胞の正体だったならば、それ自体は一つの発見だが、iPS細胞に取って代わる可能性は低くなってしまう。
吉村教授が引用したブログによると、増殖能を持ち医療応用可能なSTAP幹細胞だけでなく、元となるSTAP細胞のDNA配列情報にもTCR再構成の痕跡がないとのことで、教授は、もし事実ならと前置きした上で、論文の図と明らかに矛盾すること、多能性誘導説がますます弱くなることにも言及している。
STAP細胞への相次ぐ疑惑も、実験手技解説が公開され、小保方博士自身の追試成功によって一段落するかに見えたが、まだ続きそうな気配である。
(文責:チリ人φ★)
元ネタのブログ
http://new.immunoreg.jp/modules/pico_boyaki/index.php?content_id=348
理研の実験手技解説
http://www.cdb.riken.jp/jp/04_news/articles/pdf/14/protocol_exchange_v1.pdf
体細胞の分化状態の記憶を消去し初期化する原理を発見 | 60秒でわかるプレスリリース | 理化学研究所
http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140130_1/digest/
体細胞の分化状態の記憶を消去し初期化する原理を発見 | 理化学研究所
http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140130_1/
MUSE細胞(成人ヒトの間葉系組織から発見された多能性幹細胞)
http://www.stemcells.med.tohoku.ac.jp/outline/
記者注:TCR再構成の説明を大幅に簡略化したので、詳しくはこちらをどうぞ
T細胞の分化と機能
http://www.genome.tokushima-u.ac.jp/dei/tcellreview.html
STAP幹細胞は酸刺激で多能性を獲得した細胞ではない?理研が公開した実験手技解説が要旨と矛盾?慶應大教授が新たな問題点指摘の続きを読む